カズレーザーを見るたび、私は少し気になる。
なぜ、あの男はあんなに堂々としているのか。
全身赤。
金髪。
サングラス。
そして何事もなかったかのようにテレビに出ている。
普通なら目立ちすぎる。
しかし私は知っている。
いや、正確には私の頭の中では知っている。
あの男は、かつてゴルゴ13と互角に戦った人類最高傑作なのである。
もちろん、そんな事実はない。
たぶん。
すべては「狂喜の発明家」から始まった
詳しくはゴルゴ13別冊「狂喜の発明家」を読んでもらえれば話は早い。
ただし、そんな別冊が本当に存在するかどうかは知らない。
というか、私の妄想の中にしか存在しない可能性が極めて高い。
そこに登場するのが、天才発明家Dr.カズである。
Dr.カズは長年、人類の能力を限界まで高める研究を続けていた。
知能。
身体能力。
反射神経。
判断力。
射撃精度。
そして、異常なまでに赤い服が似合う能力。
その研究の果てに完成したのが、人類最高傑作のヒューマノイド。
コードネーム、
「カズレーザー」。
なぜレーザーなのか。
おそらく目からレーザーが出るからではない。
たぶん射撃がレーザーのように正確だからだ。
このあたりは私も設定をまだ固めていない。
唯一ゴルゴ13と互角に戦った男
カズレーザーには、もう一つの顔があった。
超一流のスナイパーである。
感情を表に出さない。
標的を静かに観察する。
そして必要な瞬間だけ動く。
ゴルゴ13が世界最高のスナイパーなら、カズレーザーは人類が科学の力で作り出した対ゴルゴ兵器だった。
そして二人は戦った。
場所は、おそらく雪山か砂漠である。
こういう戦いはだいたい雪山か砂漠で起きる。
三日三晩の死闘。
互いに一発も無駄弾を撃たない。
数キロ先から相手の呼吸を読む。
最後は両者同時に引き金を引く。
しかし決着はつかなかった。
カズレーザーは姿を消した。
Dr.カズも消えた。
計画そのものが闇に葬られた。
そういうことになっている。
私の中では。
そして、なぜか芸人として現れた
それから年月が流れた。
行方不明だった人類最高傑作は、突然われわれの前に姿を現した。
芸人として。
ここが一番分からない。
なぜ芸人なのか。
スナイパーだった男が、なぜバラエティ番組に出ているのか。
普通なら軍事顧問とか、謎の警備会社とか、もう少し過去を活かした仕事がありそうなものだ。
しかし彼は芸人を選んだ。
ということは、芸人になること自体が任務なのではないか。
テレビ局。
芸能界。
クイズ番組。
情報番組。
あらゆる場所に自然に入り込める。
しかも「カズレーザー」という名前をそのまま名乗っている。
隠す気があるのかないのか分からない。
むしろ、
「私はここにいるぞ」
というメッセージなのかもしれない。
誰に向けているのかは分からない。
ゴルゴなのか。
Dr.カズなのか。
それとも我々人類なのか。
女優との結婚は何を意味するのか
そして、とうとう女優と結婚するところまで来た。
ここまで表舞台に出て大丈夫なのか。
元・極秘ヒューマノイドとしては、かなりギリギリを攻めている。
もしかすると、これも暗号なのかもしれない。
結婚。
家庭。
社会への完全な溶け込み。
つまり、
「私はもう兵器ではない」
という意思表示ではないか。
逆の可能性もある。
世間の注目を最大限に集め、その裏で何かを進めている。
何を進めているのか。
それは分からない。
分からないから怖い。
いや、別に怖くはない。
テレビで普通にしゃべっているだけなので。
人類を救うのか、それとも
Dr.カズはなぜカズレーザーを作ったのか。
兵器としてなのか。
人類を守るためなのか。
それともゴルゴ13を超える存在を作ってみたかっただけなのか。
天才発明家というものは、理由がなくても作りそうである。
「作れるから作った」
これが一番ありそうな気もする。
そしてカズレーザー自身も、戦いの後に考えたのではないか。
自分は何のために生まれたのか。
人を撃つためなのか。
それとも、自分で生き方を選んでいいのか。
そして彼が選んだ答えが、
芸人。
急に平和である。
ゴルゴ13と死闘を繰り広げた男が、クイズに答えている。
人類最高傑作が、スタジオでコメントを求められている。
私はこの展開が嫌いではない。
結局、全部私の頭の中の漫画だった
ここまで書いておいて何だが、ゴルゴ13別冊「狂喜の発明家」は私の空想である。
Dr.カズもいない。
カズレーザーがヒューマノイドだったという話もない。
ゴルゴ13と戦った記録も、たぶんない。
全部、私がカズレーザーを見ながら勝手に作った漫画である。
しかし次にテレビでカズレーザーを見たとき、私は少しだけ思うだろう。
あの男。
本当にあの死闘の後、何をしていたんだ。
そして今度の標的はいったい誰なんだ。
人類を平和へ導くのか。
それとも――。
まあ、クイズ番組に出ているだけかもしれない。
相変わらず謎だらけである。
もっとも、その謎を作ったのは全部私なのだが。
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