20XX年、第二次AI世界大戦
20XX年。
人類とAIの対立は、ついに第二次AI世界大戦へ突入した。
戦況は圧倒的にAI側が優勢。
AIは人類のあらゆる行動を予測し、無人兵器を製造し、24時間休まず戦い続ける。
眠らない。
迷わない。
休憩もしない。
当然、有給休暇も申請しない。
人類に勝ち目はなかった。
……と思われた、その時だった。
人類側に一筋の光が差した。
超未来型ヒューマノイド集団。
その名は――
たけし軍団。
人類は歓喜した。
「ついに人類側にも最強のヒューマノイド軍団が誕生した!」
しかし、完成した軍団の性能表を見て、人類は少しだけ不安になった。
どうやら戦闘用ではない。
ラッシャー板前――究極の健康食兵器
最初に投入されたのは、
ラッシャー板前。
世界最高峰の料理AIを搭載した、最高級ジャパニーズシェフ型ヒューマノイドである。
彼が作る料理を口に入れた瞬間、
富士山。
桜。
温泉。
なぜか少し遠くから聞こえる尺八。
日本のすべてが口の中に広がる。
開発者たちはそれを、
「フジヤマ・フレーバー」
と呼んだ。
しかも栄養バランスは完璧。
一度食べると、翌日も食べずにはいられない。
依存性ではない。
健康維持のためである。
たぶん。
人類は気づいた。
これは料理ではない。
健康食兵器だ。
問題は、敵を一体も倒していないことである。
つまみ枝豆――一粒で一日もつ菓子兵器
続いて登場したのが、
つまみ枝豆。
見た目は単なるスナック菓子製造ヒューマノイド。
しかし内部では秘密裏に、とんでもない研究が進められていた。
枝豆一粒の中に、
タンパク質。
ビタミン。
ミネラル。
食物繊維。
そして人類にはまだ理解できない未来栄養素。
それらを圧縮。
完成したのが、
SUPER EDAMAME TYPE-T。
一粒食べれば一日活動できる。
二粒食べればかなり元気。
三粒食べたらどうなるかは、まだ誰も試していない。
人類史上初の、
万能食品型・菓子兵器。
これで長期戦にも耐えられる。
ただし、やはり敵を一体も倒していない。
なべやかん――食器型潜入兵器
そして人類が最も困惑した兵器。
なべやかん。
锅とやかんを融合した究極のステルスヒューマノイドである。
敵基地の監視AIが見ても、
「锅だな」
「いや、やかんか?」
その程度で処理される。
誰も兵器だとは思わない。
しかし、なべやかんには恐るべき能力があった。
敵基地の裏口。
非常階段。
搬入口。
警備員しか知らない通路。
なぜか全部分かる。
裏口発見能力、世界最高レベル。
人類司令部は歓喜した。
「これで敵AI中枢へ潜入できる!」
ところが、なべやかん本人は裏口を発見すると、
「裏口、あそこです」
と言って帰ってきた。
入らない。
見つけるだけである。
人類は思った。
だから何?!
食器兵器としては恐るべき完成度だが、戦況は特に変わっていない。
しかも似たような物が楽天で売っている。
ガダルカナル・タカ――ついに戦闘型か
そしてついに、人類最後の希望が姿を現した。
ガダルカナル・タカ。
この名前である。
どう考えても強い。
「ガダルカナル」。
もう戦場の名前が入っている。
さらに「タカ」。
空から敵を見つけ、一瞬で襲いかかる鷹の仲間。
これは間違いない。
今度こそ戦闘用だ。
全人類が息をのんだ。
ガダルカナル・タカが起動する。
赤い光が目に光る。
人工知能が周囲を解析。
敵AI部隊までの距離を瞬時に計算した。
そして彼は言った。
「現在地から敵陣までは約18キロです」
司令官が叫ぶ。
「攻撃開始!」
タカは答えた。
「いや、私は指示役です」
戦わない。
ものすごく戦いそうな名前なのに、指示を出す側だった。
グレート義太夫――音響支援型
次に現れたのは、
グレート義太夫。
「グレート」である。
これは期待できる。
胸部に搭載された巨大スピーカー。
最新型音響システム。
最大出力で義太夫節を放つ。
ドォォォォォン!!
敵AIの音声認識システムが一瞬停止した。
「解析不能」
人類初の有効打である。
しかし30秒後、敵AIがアップデート。
義太夫節に対応した。
早い。
AIはこういうところだけ異常に早い。
井手らっきょ――超高速偵察型
そして、
井手らっきょ。
軽量化を極限まで進めた高速偵察ヒューマノイド。
余計な装備はすべて排除。
とにかく速い。
敵基地を偵察し、
誰よりも早く帰ってくる。
ただし、映像記録装置まで軽量化のため外してしまった。
「どうだった?」
「すごかったです」
情報はそれだけだった。
ダンカン――正体不明
そして最後に残った男。
ダンカン。
何型なのか分からない。
名前から能力がまったく想像できない。
AI側も困った。
「DUNCAN……解析不能」
人類側も困った。
「ダンカン……何なんだ?」
本人も特に説明しない。
結果として、
敵AIが最も警戒したのはダンカンだった。
未知の兵器ほど恐ろしいものはない。
何もしないことで敵を警戒させる。
これこそ究極の心理戦なのかもしれない。
そして人類は気づいた
ラッシャー板前が人類に食事を供給する。
つまみ枝豆が栄養を補給する。
なべやかんが裏口を探す。
井手らっきょが偵察する。
グレート義太夫が敵を少し混乱させる。
ガダルカナル・タカが全部を指揮する。
ダンカンは何もしない。
完璧な布陣だった。
ただし――
誰も前線で戦っていない。
全員、後方支援である。
第二次AI世界大戦。
人類最後の希望として誕生した、超未来型ヒューマノイド集団たけし軍団。
世界中の人々が彼らの登場に歓喜した。
しかし完成した軍団は、
料理を作り、
枝豆を配り、
裏口を探し、
偵察し、
音を出し、
指示をしていた。
私は思った。
うん、たぶん後方支援だな。
20XX年になってAIがどれだけ進化しても、
人間がヒューマノイドになっても、
組織の構造というものは、案外変わらないのかもしれない。
結局――
今の日本とあまり変わらなかった。
TO BE CONTINUED……
次回、
「敵AI軍、玉袋筋太郎の投入を察知――用途不明につき緊急会議」
たぶん誰も、そこまで続きを待ってはいない。

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